先週中国は中秋節で 9月17・18・19日が休みでした。とは言ってもセーター工場が10月1日の国慶節の連休前の出荷の多い時だし、毎日休めるわけはありません。毎度のごとくバタバタの18日月曜日の出荷が夜中の12時ごろに終わって、19日は久しぶりの休みでした。昼を蘇州で食べてから一度上海に戻りました。
今年初めて食べる上海蟹(大闸蟹 da zha xie ダージャーシエ)でした。上海蟹といえば無錫と蘇州の太湖(タイフー)、陽澄湖(阳澄湖 ヤンチェンフー)だと日本の人もお分かりだと思いますが、実際は地球の温暖化や環境問題でこの2つの湖での養殖は制限されています。我々の蘇州の工場から車で10分ほどで見ることができる蘇州側の太湖は飲料水として浄水して使われるので、今はカニの養殖は全面禁止になっています。
まあ 9月も終わりに近づくとはいえいまだ最高気温は30度を超えます。当然水温も高いわけであり、湖の底の冷たい石の上で養殖する上海蟹はまだまだ時期ではありません。昔は秋くらいから季節だったのが今や12月くらいから?という雰囲気です。今回食べたものも格好はまあまあですが、肉付きが悪いというか痩せ気味で、美味しくありません。
昨日朝、工場に歩いて行っていると、道端で大闸蟹 da zha xieを売っていました。よくある光景ですが、どこのものだ?と聞いたら一瞬言葉に詰まって 陽澄湖だ! まあほぼ嘘だと思いますが、だいたい足の、人間でいう太もも部分を指で挟んで押さえるとすぐに凹むようなのは肉が少ないということ、今の時期はどこのものを食べても同じですね。
でも、ここ10年くらい 上海蟹を食べることが中国の人も少なくなっていると思います。僕の私見では、水温があがって美味しくなくなっているのだと思います。それと、前ニュースで見ましたが、養殖する人がいなくなってきているとも言っていました。技術を受け継ぐ人も少なくなっているのかもしれません。
豆知識みたいな話は終わって、本題に入ります。
このカニの養殖も環境問題と関わりがありますが、我々のセーター生産にも影響を及ぼす出来事が今 まさに起こっています。
中国のニュースでも 日本のニュースでも報じられていることですが、非常にわかりやすく書いてある👇のブルームバーグのニュースを使わせてもらいます。
これは非常にわかりやすく書いてあって、中国のニュースでも同じことが言われています。
国家の政策とかそんな話は僕がすることではないので、我々アパレル衣料生産者が直接影響を受けていることをまず結論から話すと、
1、我々は上に書いてある通り‘製造業が盛んな江蘇省’内の蘇州市にある工場でセーターを生産しています。その我々セーター生産業者もこの中国の電力消費量の抑制措置で、全ての工場というわけではないですが、9月10日くらいから月末まで週3日〜4日間節電のため休業の通知を受けている、もしくはこれから受ける状態にあります。
2、布帛の工場が多い同じ江蘇省の南通市の生産業者、検品所への影響が一番多いように思えます。24日に我々の使っている下請けやもともと環境問題で槍玉に挙げられることがよくある染め屋さんとかから電話がかかってきて25日からの「休業通知を受けた」と連絡があり、かなり近い場所の知り合いの工場も同じく月末まで休むように通知が来た、とのこと。
江蘇省の次に書かれてある、浙江省の嘉興市の下請けのプリント屋(これも環境によくない)に出していたものが、月末まで営業できないので間に合わないと言ってきて、我々にとっては初めての直接被害となりました。
3、そうなると、もともと国慶節前に出荷するべきものは毎年非常に多く、それでなくても納期遅れが多い時なのに、さらに状況が悪くなり出荷できないものが多くなります。。この数日はそういう営業できなくなった下請けから生産途中の編み地を取り戻して本工場でつくったり、まだ休業通知を受けていなくて営業できる知り合いの下請けを探して無理やりやらせたりで、とにかく製品を作りあげて日本に出荷しないといけないので駆けずり回る状態です。これが理由で間に合わない!と、日本のお客さんが売るものがこなくてとても困ったことになる!!という話です。
このような休業要請は以前も、環境問題への対策、夏の電力の節約のため、ごく最近ではコロナの感染防止対策のためなど、今までもあったことです。その度にできる限りのことをやってできる限り出荷する、、、ということを我々はやってきましたし、今もやっています。
ただ、我々アパレル生産業よりももっと電気を使う業者、原料や素材の生産者、付加価値商品の大小企業の生産者、などこれがないと世界が困る!というものを生産している業者も莫大な数があるはずです。それらの業者が受ける影響はもっと凄いと思います。
これについて中国のニュースをみて友達にも聞いて僕の頭のレベルで少し勉強しました。
A、 以前書いたことがあるように、もともと東南アジアで生産しようとしていた世界のアパレル製品のオーダーの多くが、コロナの影響で東南アジアの状況が不安定になったため中国に戻ってきているのは事実です。山東省のアパレル生産のキャパはそれが理由で相当逼迫しています。おそらくアパレル商品以外の生産オーダーも中国全土で生産しているに違いありません。
B、 これも書いたことがありますが、原料価格の高騰は世界中で起こっています。
ということは、当然Aによって今までより生産が増えるわけですから電力を多く使うことになり、電力不足は必然的に起こる。>>>上のニュースと一致しています。
ここからは我々が居酒屋で話題にするようなネタみたいになりますが、
>> これを狙ったのか?アメリカのさしがね? オーストラリアの石炭を中国が輸入できなくなった。このオーストラリアの石炭は天然(掘るのではなく露出しているもの)で良質とのこと。
>> そうなると石炭発電が多い中国は余計に困る。(ただ、オーストラリアもその石炭を載せた船が中国から戻るときはレアアースを積んで帰ってくるわけで、これが手に入らなくなってそれはそれで困るわけですが。)
>> さらに書いてあったのはアメリカのFRBがUSドルを刷りまくったせいで、中国元高になって、Bの原料価格の高騰、、そして輸出品が損失を被っている。これは我々の日本のお客さんにも影響が出ていることですよね。
>> それなら、と 中国は対抗措置でオーストラリアの石炭はいらない! どうせコンテナの数も逼迫するなど、輸出の費用も上がっているし、なら節電して生産を鈍化して輸出を制限しましょう!!
>>するといずれは世界が中国からものが来なくて困るということです。当然アメリカも日本もオーストラリアも困ります。
まあこういうことを考えて世界は中国以外の生産地を確保してきていて日本も努力しているわけですが、それでもこのようなことは繰り返されているわけです。
他の中国のニュースでは、これを機に!というわけではないですが、中国は国が電力会社に更なる電力開発を強く命じた!とか 碳中和(tan zhong he)カーボンニュートラルに向かって環境対策の目標を再提示する、ということが書いてあります。何れにしても国が特別に力をいれて電力開発を早めに解決してこのような節電措置など取らなくてもいいようにしてもらいたいというのが、我々の希望でもあります。
アメリカとのいざこざ?というニュースの中に、上に書いた対抗措置で輸出を制限しましょう!と言う部分について、『そうすると損が少なくなる、輸出が減ればものの流通量が減って、その単価が上がる!在庫が履ける!』ということが書いてあって、今までこういう話は、ああそうか、、という感じで深く考えていませんでした。
中国語でニュースを読むのは中国語がある程度できてもまあまあ力のいるもので、その中国語の表現を考えていたら、ふと思いつきました。例えば我々の生産しているセーター、これを日本に輸出するのを制限、もしくは一時停止したら、日本のセーターが不足してその単価が上がるのか?服の価格が上がるのか?経済現象ではその理論が成り立つのでしょう。石油が減産されれば原材料価格が上がるとか。マスクが市場に溢れたら値段が下がるとか。
しかし、我々のようなファッションセーターは??別になくてもいいですよね。ないからと言って価格が上がるものではないですよね。セーターなくても我慢もできますよね。服を生産している僕が言うのはよくないかもしれませんが、2年くらい僕なら服を買わなくても生活できると思います。つまり、僕らの業種は必需品でないものなら、この経済現象とは合致しないということです。では我々は付加価値商品を生産しているのか?この安さでそれはないですよね!中途半端な生産者なのか?? そう考えると、一生懸命仕事をしていても何か悲しい感じがします。
まあ僕個人の悲哀と愚痴は置いといて、
何を思うかと言うと、中国で末端の我々セーター生産者にも影響が出る国際問題。大国である中国とアメリカ、に 我々日本はそれほど関わっているようにも思えないのに踊らされているだけのようですよね。少なくとも僕は踊らされています。こういう時にもの申せる日本になるべきだ!とか政治家などもよく言っていますが、もっと本気で考えて、日本の存在感を高めれる人材が出てきてほしいですよね。何が正しいとか世界がどうだとか、そんなの日本が人のこと干渉することはほとんどできないわけだから、日本自身があらゆる力をつけないといけないわけですよね。頭のいい世界を知る人間は日本にもいっぱいいるわけだから、それに対応できる人が出てきてほしいですよね。
2021年 9月28日